深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

ある「ログ残し議論」に関する思い出

昨日書いた記事にいただいたブックマークコメントに、いくつか「ある程度時間の経過で自動的に書いたものが消えるシステムがあったらどうだろう」というものがあった。(参照→はてなブックマーク - 中くらいの声でしゃべる - 深く考えないで捨てるように書く
それを読んで、思い出したことがあったので、書く。
なお、昨日の記事とは直接的には関係のない思い出話であることを先にお断りしておく。


17年ほど前のこと。だと思うが、若干前後はするかもしれない。よく覚えていない。
当時、NIFTY-Serveというネットワークサービスをよく利用していて、主にあるフォーラムのRT(チャット)に常駐していた。
その頃、それにまつわる議論が起こったことがある。「チャットのログを残すのはマナー違反か」というものだ。
システム側でチャットのログを残す、ということは行われていなかった。厳密に言うと、おそらく一定期間のログはサーバ側に残っていたのだろうが、それをユーザーが参照する方法は全く存在せず、サーバ側でもそれを長期に残してはいない可能性が高いと思われていた。いずれにしろ、ユーザーにすれば、あとから参照できるログは残らないと解釈する状況である。
そういった状況でチャットを行っていたが、ローカルにログを記録する人はいた。特に深い意味はなく、通信ソフトにベタの通信ログを記録する機能がついているから、というだけのことである場合が多かったようだ。
それに対して「その場のおしゃべりであるチャットをログに残すのはマナー違反ではないか」と言う人が出てきた。チャットする側は、その場で消えてしまうおしゃべりだと思っているから軽く発言しているのであって、それをログに残して後から「こんなこと言ってたよ」というように公開される恐れがある、となると、不快あるいは不安に思ってチャットできない、という意見だ。
これに対し、ログを記録する側の意見は、ソフトについている機能を使っているだけなので、特にあとで公開しようとか揚げ足をとろうとかいう意図があるわけではない。ソフトによってはベタログを記録する機能をオフすることができないものもあり(確かMacのNINJA-Termがそうだったような)、そのような意見を言われても困る。使うソフトを制限されるのも困る。というのが主な意見だった。
この議論は紛糾したけれど、結局ははっきりした結論は出ず、なあなあで終わったように記憶している。ソフトの機能は仕方ないし、それを悪用しなければいいんじゃないの、結局は信頼関係の問題だよね、みたいな。


今この話を思い出すと、なんと牧歌的だろう、と思う。
今では、チャットだろうと掲示板だろうと、なにかネットで発言すればログが残るのがデフォルトみたいなものだ。文字の記録に必要なディスク容量はあの頃と比べて大して増えていないが、ディスクの価格はどんどん下がり、相対的に残せる文章量が激増した。結果、残せるものは残したほうがなにかと便利だよね、ということであちこちにログが残るようになった。残す意義、残す理由を考えるのではなく、残さない意義、残さない理由を考えなくてはならない時代になった。
しかし、17年前と比べて人間がそんなに変わったかというと、大して変わってないといえば変わってないような気はする。


【追記】(2007.10.7)
最後から遡って2段落めの強調部分1文を追記。