深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

リアルな絵、デフォルメ絵

http://d.hatena.ne.jp/aozora21/20070906/1189095467
アンパンマンの不気味さについての話。自分としては非常に腑に落ちるところがあって、あとで関連して記事を書きたいと思っているが、今回はそれとは別に、こちらを読んで、あ、そういえば、と思ったことがあって、そちらについて。
はてなブックマーク - Marco11のブックマーク / 2007年9月8日

ヨーロッパの絵本とかイラストってグロいですよね。なんで可愛いの描かないの?ってヨーロッパの人に聞いたら、だって生き物ってグロいものだろって言われた。

id:marco11さんはしばしばブックマークコメントを書き換えられるので、失礼ながら全文引用する。


私は以前からあれこれネットゲームを触っていて(最近はあまりやらなくなったが)、その関連で見聞きすることに、日本人のキャラデザインの好みと欧米人のそれが大きく異なる、という話がある。
これはもはや通説になっていて、日本人に受けるにはいわゆる萌え絵、アニメ絵が重要で、どんなにゲームデザインがよくても欧米人好みのリアルな6頭身や怪獣めいたデザインのものは絶対成功しない、という話なのだ。実際に、面白いゲームで欧米では絶大な人気を博しているが、日本単独サービスは鳴かず飛ばずで終了、という話はいくつか聞く。
ネットゲームだけでなく、オフラインのゲームでも同様のことはあるらしい。例えば、エレクトロニック・アーツ社のシムシリーズのキャラデザインの変遷はこうだ。
従来のシムピープル系のデザイン→http://www.thesims.jp/
まもなく発売の最新作Wii用ゲーム「ぼくとシムのまち」デザイン→http://boku-sim.jp/index.html
また、ゲームから離れたところでは、テディベアのデザイン。欧米の古いテディベアを見ると、往々にして鼻(口吻)が長く、手足もひょろっと長く、なんとなくバランスが悪く見える。日本産のテディベア(あるいは子どものおもちゃとしての熊のぬいぐるみ)の多くは、口吻が短めで、全体にまるっこい。どちらが生きた熊の形に近いかというと、欧米のものだ。現物の熊はけっこう口吻が長い。


そのへんの話から、傾向として、日本人はデフォルメされて輪郭のはっきりしたかわいい絵柄を好み、欧米人はリアルで陰影の強い立体的・写実的な絵柄を好む、というのはあるようには思う。
なぜそうなのか、はわからないが、遺伝子上にそういう情報があるとは思えないから、後天的に獲得される、文化的な理由なのだろう。それぞれに、小さいころからそういうものばかり見ているから、そういうものだ、と刷り込まれるという感じだろうか。
最近は欧米でもオタク文化や萌え絵、日本の漫画を支持する人が増えてきているし、それ以前からもディズニーが支持されてきていたことからすると、リアルでない絵への好みは意外と少なくないんじゃないかな、とも思う。
だのに、リアルな絵ばかり描かれているのは、なぜだろう、と思っていたのではあった。
それが、このブクマコメントで急に納得したのだ。


「だって、生き物ってグロいものだろ」。
言われてみればそうなんだな。グロい。かわいくない。そんなに都合よい形にはできていない。虫なんぞ典型的だ。絵で見るチョウやセミ、アリ、カブトムシはかわいいし、写真で見てもかわいいんだが、実物を間近で見た時のグロいこと。魚もそうだし、鳥もそう。あ、四つ足の哺乳類はそうでもないな。猫なんぞ間近で見るとかわいさ倍増、触ると3倍増。それはさておき。
欧米では、見たものをそのまま写実的に絵にする、ということに一つの価値観があるのだろうな。写真のように、とまではないけれど、見たものをそのままいかに絵にするか、ということで。グロいものはグロいままにグロく描くことに意義がある、的な。
一方、日本ではそういうことにあまり大きな価値を置かれていなかったんじゃないかという気がする。昔の日本画や浮世絵などを見ても、見たものをそのまま描くよりも、見たものをいかにアレンジして描くか、とか、見たままじゃないけど絵として美しいかどうか、という基準があるように感じる。グロいものをそのままグロく書いては芸がない、それをどうかわいく描くかが腕だろう、的。これが後の擬人化萌え絵につながった、ってことはないだろうが。
美術については門外漢だから、勝手に思っているだけだが、そんな気がしてきたのだった。


日本に限らず、アジアはわりとそういう傾向があるのかな。中国や東南アジアのものなども、写実的というより、水墨画のようにある種デフォルメされた絵や、輪郭がくっきりとして色と色の境界のはっきりした絵、という印象がある。
まるっきり素人の印象論なので、大幅に間違っていたら、いろいろとご指摘くだされば幸いです。