深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

女子名の「あ」考

痛いニュース(ノ∀`) : 【論説】 読めない名前(暴走万葉仮名)の女子学生が多い大学は偏差値がね、ちょっとアレなのです…呉智英 - ライブドアブログ
という記事が出て、いわゆるDQN名の話に花が咲いているもよう。この手の話は、2ちゃんねる育児板に「子供の名前@あー勘違い・子供がカワイソ」という伝統的スレがあって、ここを見ているともう、マジですか、というくらい出てくる。どう考えてもネタだろ、という名前もあれば、別にDQNじゃないでしょ、という名前も出てくる。
という一方で、とりあえず女の子の名前では「子」がつく名前は最早ごく少数派というのも事実で、上の娘のクラス(年長)では、女子15人強のうち、「子」のつく名前の女の子は現在一人だけ。同世代には「子」のつく子が多かったが、それでも小・中・高校通してみても、半数くらいのもんだったように思う。最後に「み(美・実など)」「え(恵・枝など)」がつく子がけっこういた。そういう時代だったんだろう。
ちなみに、母の世代は(ぎりぎり戦前・戦中生まれ)「子」がかなりついている。祖母世代(大正生まれ)になると、「子」がつかない。


というところで、「あ」の話。
思いっきり独断と偏見による仮説だが、女子の名前の場合、最後に「あ」がつくと途端にDQN名っぽくなる法則があるんじゃないかという気がする。例えば、「じゅり」という名前は、DQN名と思う人もいるだろうが、そこまではいかないでしょ、と思う人もけっこういると思う。しかし「じゅりあ」となると、いやぁどうなの、という人がぐんと増えるのではないだろうか。「まり」と「まりこ」と「まりあ」の印象で比較してもいい。
「子」で終わるというのは、現代日本の女子の名のひとつの定型である。他に、比較的定型的に使われるのは、上記にもあげた「み」「え」など。その他、単独の音ではないが、イ段で終わる名前は定型的と感じられやすい(かおり、さおり、みさき、など)。イ段で終わると座りがいい、というのは、男子の名でもしばしば見られる(たかし、ひろし、やすしなど)。これは、もともと日本語の形容詞が歴史的文法ではイ段が終止形となることから印象的に座りの良さを感じるのではないかと推測する。
これに対し、最後が「あ」で終わる言葉は、日本語には大変少ない。単独で「あ」と読む漢字も少ないし、そのうち名前に使えそうな字は、常用・人名用漢字の関係で、さらに限られる。たぶん、「亜」しか実用性がないんじゃないだろうか。加えて、「○あ」と読む漢字もない。
これに対し、外国語では、カタカナ表記すると「ア」で終わる言葉は多数あり、特にラテン語系では女子の名はア段で終わることが多い。
最後がア段で終わる名前は日本でも特に最近増えている印象で、その場合「か」(あやか、さやか、みかなど)「さ」(あずさ、りさなど)「な」(ひな、ゆいななど)「ら」(さくら、さらなど)などがよく見られる。ア段の持つ明るく開けた音の印象が流行として好まれている*1とのと同時に、ア段で終わる名前は軽く日本離れした印象があり、その点でも好まれているのだろう。
しかし、「あ」で終わる場合と大きく異なるのは、ここであげた「か」「さ」「な」「ら」などは、それぞれ単独でも名前につけて変ではない漢字があったり(香、加、沙、菜、奈、良、羅など)、その音を含んだ適切な漢字があったりする(梓、桜など)。このため、必ずしもDQN的にはならない。
以上の事情から、「あ」で終わる名前をつけると、漢字を使う限り、必然的に無理な難読当て字か、一音一漢字の、リンク先記事でいうところの「暴走万葉仮名」を使わざるを得なくなるのである。また「外国かぶれな名前だなぁ」という印象も与えがちになる。
結論からいうと、「あ」は名前の最後に使おうとすると、それだけで地雷になる。


私自身は、一旦つけた名前なんだし、本人が選んだ名前でもないんだから、他人の名前にあれこれ言うことはない、少なくとも個々の名前をもっている人について「DQNな名前だな」とかは言うもんじゃないと思っている。「あ」がつく名前いいじゃない、かわいいし。だいたい、身近な相手なら、変わった名前でもすぐ慣れるし読みも覚えるし。本人は思うところあるだろうが、それは本人と名付け親の問題であって私には関係ない。
が、考えるネタとしてはなかなか面白いし、漢字の使い方や読ませ方に関する想像力についてはすごいと思うことがある。上記2ちゃんねるのスレで「光宙」で「ぴかちゅう」と読ませるのを見たときは感動した。これにくらべたら「宇宙」で「こすも」なんて普通すぎ。


【追記】(2007.9.3)
女子名の定型末尾で「み」「え」の他、「よ」(代、世など)もあることを記載し忘れた。自分の子どものころはよくこれらの末尾を見た。
このうち、「み」はまだまだ形を変えつつ残っているが、「え」「よ」は「子」同様かなり減っているなという感じ。

*1:これは、男子の名で「た(太など)」で終わるものが流行っていることも関連すると思われる。