深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

「親学」ってなんだ?

あちこちで(マスコミもブログも含めて)文句ばっかり言われてだーれも褒めてない、教育再生会議の「親学」提言。
中身についてなにか書くのも馬鹿らしいくらい、箸にも棒にも引っかからない内容だなとしか言いようがない。誰がこんなもの守るもんですか。実際に今子育てしてる人間は「なんじゃこりゃーハハハハハ」と軽く笑い飛ばし、呆れるだけだ。これを実施してよくなると本気で思ってるのは、中島みゆきの言うところの世間知らずの「学者」だけ。


なんてことはもうさんざん言われてることなのでいいとして、「親学」ってなんだ? とふと思う。
物理学は、物理に関する学問。教育学は、教育に関する学問。歴史学は歴史についての、文学は文章についての学問。
じゃあ、親学は、親に関する学問ではないのだろうか。親になるための学問じゃないだろう。
親とはなにか。親の役割とはなにか。よい親とはなにか。親となるために重要なものはなにか。親として存在するために重要なものはなにか。etc.
そういうことを研究することが「親学」のはずなんだな。


そこで見てみる、「親学」提言のポイントと称されている11項目。http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070426k0000m010157000c.htmlより。

(1)子守歌を聞かせ、母乳で育児
(2)授乳中はテレビをつけない。5歳から子どもにテレビ、ビデオを長時間見せない
(3)早寝早起き朝ごはんの励行
(4)PTAに父親も参加。子どもと対話し教科書にも目を通す
(5)インターネットや携帯電話で有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」の実施
(6)企業は授乳休憩で母親を守る
(7)親子でテレビではなく演劇などの芸術を鑑賞
(8)乳幼児健診などに合わせて自治体が「親学」講座を実施
(9)遊び場確保に道路を一時開放
(10)幼児段階であいさつなど基本の徳目、思春期前までに社会性を持つ徳目を習得させる
(11)思春期からは自尊心が低下しないよう努める

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070426k0000m010157000c.html

あまりに関係ないことだらけ。一部は方向性を間違った「親の心得」マニュアルみたいなものだし、それぞれ問題をはらんでいることは言うまでもない。(6)(8)(9)なぞは親自身とはなんの関係もないというか、親自身ではどうにもしようのない項目。


どうやら教育再生会議の人々にとっては、「親学」とは、親になる人々に対して「親とはこうすべきですよ」などという方法を教えてあげるものであるらしい。
それは「親教育」だ。「親学」では決してない。


私は「親学」ならば歓迎する。親でない存在から、子を得て親になり、親として生きていく過程で、どんなことが起こるのか、どんな心理をもつのか。親でない者と親である者との違いはどこにあるのか。精神的に、あるいは社会的に、あるいは制度的に。親とはなんなのか。子どもからみて必要なのかそうでないのか。必要ならばなぜ必要なのか。
そういったことは、小児学(育児学)、家政学社会学、心理学、精神医学といった多方面で扱われてきているし、ウェットな話題としてはよく取り上げられているけれど、親という焦点で、かつドライに科学的にまとまったものはまだないと認識している。そういうようなことを、親学という視点から再構築するようなことであれば、触れてみたいと思う。


とりあえず、「親学」という言葉をこんな底の浅い程度で使うな。なにかご立派な学問かとわざと誤認させるような言い方はいけない。
教育再生会議には言いたい。