深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

「どこが」に意味がないのについ言ってしまうのはなぜか

「私のどこが好き?」ネタの続き。


【衝撃】「私のどこが好き?」の「どこが」、実は意味なんてなかった! - 月がでたでた月がでた
ものすごくいい、というか、腑に落ちる、というか、ああ、そうそうそうよね、とか、そんな感じで読んだ。
言った側としては、「どこが」を冷静に指摘されるより、ようするに好き、ということをきちんと伝えてもらえば、満足がいくんだろうな。もしかしたら、「どこが」をぴしっと指摘されると、却って困る、ということすらあるかも。「顔が好き」→「結局見た目かよ」。「よく気がつくところが好き」→「あたしはお世話係ですか?」。「料理が上手いとこ」→「家政婦じゃないんだから」。「一緒にいてホッとできるところ」→あ、これはいいかも。「セックスの相性」→人によってはこの上もない称賛かもしれない。
閑話休題
上の例はかなりひねくれてはいるんだけど、ある一面を確実に表してはいる。ある美点を取り上げる時に、他の点を美点でないとして切り捨てているという面だ。「君の○○が好き」というセリフは「君の△△は正直あまり好きじゃない」という事実の裏返し、ともとれる。
美人が外見を褒められなくても気にしないのは、自分の外見はあらためて評価されなくても既に良い評価が定まっている、という認識があるからだ。そんな分かりきったことは訊いてない、というわけだ。美人でない場合(不細工とは限らない、普通にかわいい子もここに入る)、外見に言及されなければ、ああ、外見は評価されてないんだ、という考えに至る。
だから「どこが」といわれても「ここだ」と答えるのはやっぱり、いろいろと話がややこしくなるわけ。このあたりはもう既にあちこちの記事で言われているけれど。


で。それなのに「どこが」とつけてしまうのはなぜか、ということについて、id:tomo-moonさんはこう述べている。

女性がこういう言葉を恋人に投げかけるときは、恋人の態度に「自分は本当に彼に愛されているのか」不安を感じているから。でも、ストレートに上の語を言うとあまりにも押し付けがましすぎ・高圧的・必死だな的に取られそうで何となく言えない。

だから、「どこが」をつけて目くらましするというフィルタをかけるんです。しかし、そのフィルタこそが男性を必要以上に悩ませてしまうものとは皮肉な話です。

【衝撃】「私のどこが好き?」の「どこが」、実は意味なんてなかった! - 月がでたでた月がでた

これも確かにあるなー、と思いつつ、もう一つの説を述べてみる。
もし、「どこが」をつけずに「私のこと本当に好き?」と男性に言った場合をシミュレートしてみる。

「私のこと、本当に好き?」「ああ、好きだよ」「好き? 本当に?」「本当だってば」「なーんかいい加減な返事だなぁ……ちゃんと考えて答えてる?」「これ以外に言いようがないだろ、このくそたーけ!*1

あ、喧嘩になった。
ただ「本当に好き?」と訊いただけでは、「本当に好きだよ」すなわち YES or NO の回答しか得られない。本当に愛されているかどうか不安で確認したい時に、そんな簡単に答えられる問題を出しても意味がないわけで。「YES」と言うだけなら、なにも苦労しなくても簡単に嘘がつける。「本当に好き?」では、不安を打ち消せる回答を得られる可能性はほぼゼロに等しい、と、言う側の女性は無意識のうちに気づいているんだろう。
だから、「どこが」とつけることによって、相手の男性にちゃんとその件について頭を使わせようとする。口先だけでは返事できないような命題を出す。結果、出てきた答えが「うーん、全部」だとしても、そこに至るまでに考えた様子を見せてくれれば、女性はそれなりに満足する。即答で「全部」では、不満。同様に、あまりに素っ頓狂な回答、たとえばフェティッシュな答えだと、冗談(真剣に考えなかった)としかとれないので、やはり納得できない。「私について考えてよね!」というメッセージなのだ、「どこが」は。実際に「どこが」が問題ではない。「どこが好きか、君のことを考えたよ」という態度。
この結論は

むしろ、言葉よりも態度のほうが大切。

もし「私のどこが好き?」と言った彼女とこれからも仲良くしていきたいのであれば、彼女が「ああ愛されてる…」と思えるような演出を試みてみるときっといいことありますよ。

【衝撃】「私のどこが好き?」の「どこが」、実は意味なんてなかった! - 月がでたでた月がでた

結局これとほぼ一緒なんですけどね。


「私のどこが好き?」は、女性の側からみても迂闊に気軽には使わないよう、多少気を配ったほうがいいかもしれない言い方の一つだとは思うな。
相手に気を遣うとかじゃなくて、純粋に自分のため。「私のどこが好き?」に対して「ああ、これが待ち望んでいた答えなのよ!」と思うような回答を返してくれる男性は、まずめったにいないから。がっかり落ち込むか、ムッとするか、はぐらかされて気抜けするかが関の山だと思うのですよ。
「私のどこが好き?」の危険性をわかった上で先鋭的に使うのはもちろんいいんだけど、なんとなくほろっと口に出すってのは、「うーん、全部」とか「特別どこってのはないな」という回答で満足できるくらい近くて安定した間柄になってから、普通の会話として使うくらいが安心できる使い道じゃないかな、などと思ったりする。

*1:「くそたーけ」は「バカ」でも「アホ」でも「あんぽんたん」でもお好みでどうぞ。