おかあさんといっしょの歌はけっこう深い
「おかあさんといっしょ」から生まれた曲に、「いちごはいちご」という曲がある。
歌詞をそのまま掲載することはできないので、歌詞の概要を以下に。
畑にいちご(女の子設定)が実っている。いちごは「大きくなったら何になろうかなぁ……ショートケーキの上がいいなぁ」と自らの将来を思い描く。
やがて収穫、出荷の時がくる。いよいよケーキになる、とわくわくしながらいちごのやってきたところは、なんと鍋の中。他の多数のいちごとともに放り込まれ、そこへ砂糖がやってきて……ジャムになってしまった。
私、ショートケーキの上じゃなくてジャムになっちゃった。ジャムになった私、よろしくね!
そんな歌詞。
子ども向けの歌だから、もちろんもっと歌詞は短いし単純。しかし、内容は深い。
歌についたアニメも歌詞の内容を補完する。鍋に入ったいちごのところへ砂糖がやってきて鍋に砂糖を入れるところで、歌詞では「シュガーボーイと出会って」と歌われ、いちごの眼がハート型になり、直後に、他のいちごと区別のつかないジャムに変わる。
たぶん、この歌を見た母親たちからは「はああああ」と溜め息があちこちで出たんじゃないだろうか。
だいたい、大部分の母親は、自分もショートケーキの上に乗れなかっただろうから。
歌詞では、ジャムになったいちごが自分に満足しているかどうかまでははっきりとは歌われていない。が、少なくとも、ジャムになってがっかり、もうこんなの嫌、という展開ではない。
他にも「おかあさんといっしょ」出身の、奥の深い歌はいくつもある。
例えば、「いっしょにつくったら」という歌。
「かたち」くんがいる。何にでもなれる、何でもつくれるけど、でもなんとなく寂しい。
「いろ」さんがいる。いろいろな色をつけられて華やかで楽しいけど、何にもなれない。自分が何だかわからない。
「かたち」くんと「いろ」さんが出会う。一緒にいろいろなものをつくったら、世界中のものが生き生きとして、動きだした!
以上のような概要の歌。
どう言ったらいいかうまく表せないが、深い。「かたち」くんや「いろ」さんについて、大人はいろいろな想像や思い入れをする。それぞれが男女に設定されていることも容易にわかる。もっと抽象的に、ものごとの認識を構成する個々の要素としてとらえることもできる。
ちょっと、シルヴァスタインの絵本「新装 ぼくを探しに」を想起させるような歌だ。
ちなみに、これの作詞は谷山浩子。
なにがすごいって、これらの曲は、時間にして2分ちょっと、1番と2番とサビしかないような短いもの。それでおっ、と思うような内容を表現してしまうのだから、ある意味密度が濃い。こういうものは長ければいいってもんじゃない、ということを痛感する。
文章にも同じことがいえるなぁ、とも思う。
当然、番組の特性上、いかにも子ども向きなノリだけの歌もたくさんあるのだが、侮って聞いていると突然ガツンとやられるから、子ども番組を見るのも油断ならない。