深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

「はる」の間の抜けっぷり

春たけなわ。
なんとなく、ああそろそろ春だな春の気配だな、と思うと「ああ、春だなぁ」とつい口に出して言ってしまう癖がある。夏や秋や冬は「ああ夏(秋・冬)だねぇ」とあまり言わないのだけど。
思えば、気温もほんわりとゆるんできて、陽光がぽかぽかとして、体にあたる風もぬくんでくると、なんとなく口もゆるくなりたくなるようで。特に、そんなほわ〜〜な気分のときに「はる」と口に出して言うと、ますますゆるい気分になれる。
「はる」の「は」の子音、hの間の抜け具合がゆるい気分にぴったりなのだ。らさにそのあとの母音がiでもuでもなくaなので、さらに間抜け気分倍増。「は〜」と、温泉に入って「は〜、極楽極楽」と溜め息をつくときみたいに言うと、もうそれだけで極楽な感じ。それに続けて「る」と言うと、「るんるん♪」の「る」のように楽しい音になる。
してみると、「はる」という語感はよくできている。なんだか実に春っぽい。


「なつ」は、nの粘着質な語感が、高温多湿な日本の夏っぽい。
「あき」は、「き」のkに枯れ葉を踏むようなカサカサとした雰囲気がある。
「ふゆ」は、2つの母音uがいかにも寒くて口を開けたくない、そして冷たい北風の吹く冬という感じ。
しかし、どれも、「はる」の秀逸さにはかなわないなあ。
門外漢だからよくは知らないけれど、「はるなつあきふゆ」はやまとことばだから、「春夏秋冬」よりは古くから日本にあって、昔の日本人が四季の移り変わりを感じながら、この時期は「はる」、この時期は「なつ」と呼ぶようになったのだろう。
春に「はる」と名前をつけた人はすごい。冬に「ふゆ」とつけた人と同じくらいすごい。


春になって、すこしだけ新しい生活が始まった。
パートではあるが、仕事に戻った。8年近くもブランクがあると、なかなか頭も体もついていかない。それでも、1回目の出勤よりは2回目の出勤のほうが、明らかに自分も慣れてきている。ゼロからの再出発ではない、過去にやってきたことは埋もれてはいるけれどちゃんと蓄積されていた、と、確認できた。
これから、ぼちぼちと。