深く考えないで捨てるように書く、また

もう一度、自分自身と、自分の中の言葉と生で向き合う

少子化発言関連について草稿・続き

少子化発言関連について草稿 - 深く考えないで捨てるように書くより続き


草稿続き。



・なぜ子どもが産みたいか、という理由については、あまりはっきりした理由がない女性が多いだろう。子どもはかわいいから、子どもがいるとやっぱり楽しそうだから、なんとなく子どもはもつべきだと思うから、といった曖昧な理由が多いと思われる。
(これは、不妊症の人が、そうと判明する前はそうでもなかったのに、妊娠が難しいと分かると「苦しい治療をしても、お金がかかっても、なんとかして子どもがほしい」という考えに変わるケースがしばしば本などで見られることからも推察される)

・一方、産みたくない人は、産みたくない明確な理由をもっていることが多い。内容は個々で異なり、社会的要因もあれば個人的心理的要因であることもある。しかし「どうして産みたくないのか」という質問に正面から答えられるだけの理由があることが多い。

・このため、どうしても表で取り上げやすいのは「産みたくない女性が多数いる。その理由はこうである」ということになりがち。

・同時に、産みたくない人の「産みたくない」という意識はけっこう強固である。依然として社会にある「やっぱり女は産むものでしょ」という圧力と、生物の本能としての繁殖への願望は小さくなったとしても、やはりなくなってはいない。それに対抗するためには対抗するための強い理由をもたなければならないから。

・産みたくない人の産みたくない理由をはぎ取る(例えば公的手当の充実など)ことは、一部の人には効果があるだろう。しかし、本当は「○○だから産めない(産みたくない)」のではなく、「産みたくない(産めない)。それは○○だから」という思考が女性側にあることもまた事実だ。○○という理由がなくなれば、別の理由を引っ張ってきて「やっぱり産めない」という人が実はけっこう多いのではないかと思う。

・ちなみに、よくある「産みたい人が産めない」という言質には疑問がある。大部分は「産みたい気持ちはあるけどやっぱり産むと大変だから産まない」という積極的選択であるということだ。経済的な理由というのは、だいたいここに入る。したがって、ここでは「産みたくない人」に含める。

・一方では、漠然と産みたいと思う人が素直に産むことが難しい事態になっていることも事実ある。産科問題はその一例。
そして、少子化でも構わない、と少子化の道を肯定的に考え、社会の仕組みをそれに合わせて変えると、さらに漠然と産みたい人が産みにくくなる。産むことが完全に個人の好き好き、趣味の範囲になったら、趣味のために職場環境を整える企業はなくなり、「好きでやっているんだから」と育児支援もなくなり、妊娠や育児で弱音を吐こうものなら「それなら最初から産まなきゃいいのに」と言われるようになる。少子化スパイラル。

・一般的には、子どもを産みたくない女性への抑圧は高いと思われているが(それも確かだ)、子どもを産みたいと思う女性、自分の子どもを誰かに産んでほしい男性、自分の孫を娘や誰かに産んでほしい人々にとっても、これまでの日本でなかったような、かつてない高い抑圧が起こっているのではないかと、そんな気がしている。これは自分が実際に子どもを産んでみて感じたことでもある。

・余談。柳沢大臣の「健全」発言は、子を2人以上ほしい個々の「人」を指しているのではなく、大部分の出産可能年齢の人が子を2人以上ほしいと思っている「社会集団」あるいは「生物集団」を健全と指しているのではないか。彼は「健全な状況にある」と表現している。人を指して「状況」と言うことはあまりない。


草稿まだ途中。

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【追記】(2007.2.9)
・産むことをハードルに例えると、今はそのハードルが相対的に高くなっている。
高いハードルを越えるための対策法として、3つ考えられる。
・1つは、ハードルそのものを低くすること。手当の拡充や、産休育休・保育施設の充実などはこれに当たる。しかし、これで低くできる高さには限界があり、どんなに低くしても最初から越える気のない人にとっては意味のないことである。
・もう1つは、ハードルを越えたいと思っている人に対し、ハードルを越えるための脚力を強化すること。これをどのような形で行っていくかが重要なのでは。
・最後の1つは、何が何でもハードルを越えたくなる、という状況を作り出すこと。これを実現すると、ハードルをよじ登ってでも越えたくなる、という事態が起こる。ただし、これは、身体的事情などでどうしても産めない人にとっては激しい逆風となる危険な方法でもある。


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